山岡達丸です。

 米国との二国間貿易協定交渉に一定の決着がつくようです。日本は米国側の農業部門に対する要求に、概ねTPP水準まで関税などを下げる約束をし、一方で日本側が勝ち取りたいものとされていた米国側の自動車関税の削減はなされず、維持のままの見通しとの報道が出ています。

 さらに米中の貿易摩擦で宙に浮く米国のトウモロコシは、日本が中国の代わりに輸入するということが報じられていますが、政府の説明は「日本国内のトウモロコシに害虫被害が出て供給が不足する可能性があるから」とのことになっています。

 この事実関係はもとより、そもそも米国からの輸入の大部分を占める飼料用トウモロコシは、すでに日本国内でも配合飼料の90パーセント以上を占めているほどに、国内生産量は限られていることが農水省のデータなどからも明らかであり、追加輸入の必要性の理由とするには大変苦しいものであると感じます。

 また、畜産用の配合飼料は、トウモロコシだけで構成されているわけでもない(牛の乳量を高めるために、さまざまな栄養源を混ぜて飼料としている)ので、仮に飼料用トウモロコシが過剰に輸入されたとすれば市場等に影響が出ることは必至です。その余剰分が何らかの理由で別の市場に流出する可能性もあり、遺伝子組み換えなどを含むトウモロコシの行き先について懸念が生ずるところでもあります。

 あわせて今月半ば、防衛省は防衛装備品として1機140億する米ロッキード・マーチン社より戦闘機「F35B」を2023年までに18機を導入することを正式発表しました。防衛装備品はトランプ大統領の強い関心事の一つであり、これらも交渉のカードに含まれているように見えます。

 私は与党議員時代、TPPの交渉参加是非の議論に参加し、北海道の農業を守る立場から大いに論戦を張った経験がありますが、そのときに積極推進論者の説明として「経済交渉はウィン-ウィンが基本であり、日本も独立国家なのだから、一方的に押し込まれるような決着はありえない」と悲観論者に反論する場面がありました。しかし、今回の決着はそうした方々も含めて納得のいくものになるのでしょうか。

 ところで、国内の政治ニュースの関心は内閣改造の続報に向いているようです。安倍総理の帰国と同タイミングでこれらの情報がリークされたようで、こうした手法一つ見ても、政権の政治日程の作り方や報道機関のコントロールの仕方などにつくづく恐ろしさを感じます。

 交渉内容の詳細については、今後確認していきますが、北海道の農業に対する影響も強く懸念されます。全体をよく分析しながら次の国会に臨みたいと思います。